雑感

エロゲや音楽も考察します。

Yourdiary

優しさのユートピア

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公式サイト

Your diary - wikipedia

概要

 CUBEの第2作目、CUFFSの通算第10作目となる恋愛アドベンチャーゲーム。 主人公が「幸せの神様」と出会い、お互いやヒロインたちの「本当の気持ち」や「幸せ」を探していく物語である。 CUBEの前作『夏ノ雨』が現実に即した物語だったため、全く逆に「奇跡」や「ファンタジー」の要素を盛り込んだ作品として企画された。 神様のヒロイン・ゆあは、永遠に年を取らず純粋に主人公を愛してくれる「理想の女の子」として生まれたキャラクターという。(wikipediaより抜粋)。

優しい世界

 本作品は「夏ノ雨」「ヨスガノソラ」などの作品を生み出したCUBE/CUFFSの作品である。ファンタジー要素を謳っている作品だが、現実にはない設定は神様のヒロインの「ゆあ」だけであり、それ以外はCUBE/CUFFSの過去作品と同様に日常に足がついた設定となっている。内容も主人公の周囲のささやかなイベントがメインの、いわゆる日常系の作品だ。舞台が大きく動くといったことはない。エロゲではヒロインの個別ルートで何かしらの困難を与え、クリアした暁にヒロインとより深い絆で結ばれるという手法をよく取るが、この作品でも例によって当然のようにそれがある。内容も突然の別れ、女親友を思っての拒否、一度捨てられたトラウマの復活など読者が展開を想像しやすいものだ。こうした心情に纏わるイベントは切なさや裏切り、すれ違いなど暗い側面があっても面白いのだが、この作品ではあえてそういった部分は書かれていない。幼馴染の夕陽は智希が親友や先輩の男になっても、優しさと信頼によって彼を許す。逆もまた然り。現実であれば昼ドラのような暗い対立が生まれるが、この作品にはない。それどころか、ハーレム系アニメによくある主人公を争っての修羅場のドタバタ劇すらない。ここでは不条理なまでに純化された優しさが成立している。  

からかいに潜む魔性

 前節の内容を覆すようだが、人は優しいだけの世界を好きになれるのだろうか。答えはノーである。優しくされるだけでは、誰もがいつか飽きを感じる。実際に甘いだけで面白くない他のエロゲーを私はいくつも体験してきた。ただ、yourdiaryに限っては、純化された優しさと作品の緩急の両方の問題を解決していた。その方法とは、漫才である。榎本瑞穂が、その中心にいるキーパーソンだ。彼女は夕陽と智希の関係を成就させようと、夕陽を茶化しつつけしかける。彼女は夕陽をいじっているようで、決して貶めない。その一方で彼女に由来するギャグやイベントは、作品に動きを与える。もう一つ、優しい世界を成立させるトリックがyourdiaryにはある。他のヒロインも漫才ではないが、主人公との会話で甘いからかいのやりとりが見られる。かなでの智希に対してお掃除ですよ、といってキスをしたりなど、随所に見られる。声優の声に意図的に文章に抑揚をつけているのも戯けるような印象を強調している。突然だが、島崎藤村の初恋という詩にも「誰が踏みそめしかたみぞと、問ひたまふこそこひしけれ」と二人だけの甘い冗談を言う一説の内容がある。私はこのような「甘やかなからかい」をかなり本質的な魅力であると思っている。ある事柄について女の子が二人の間柄、相手、自分のいずれかについて冗談を言うのは、男性の脳にダイレクトに魅力を与えるのだ。

総論

 個人的にハマった作品であった。私の考える「女の可愛さとは何か」が色濃く反映されている作品。

星:☆☆☆☆☆☆☆☆☆(星9個)